第5話 苦労人と、宇宙聖女(その3)

宇宙恐竜のガッツのお陰で、その3にまで話が長くなってしまった・・・・
これはすべて阿賀原きらりっていうヤツの仕業なんだ・・・・!

 「襲来、宇宙恐竜!嵐に飲み込まれる林間学校!」が起こってしまったことで、今まで理仁亜の体質に疑問を持っていた南陵学園の先生方も、それが本物であるという事を、否応なしに思い知らされた。

 事件当日。学園に残っていた教師全員の脳裏に「Jアラート」が鳴り響き、頭を押さえて転げまわった直後、学生達の家族からのコールが殺到し、現地の状況が全く分からないまままにその対応に追われた。

 慌てて引率教師らに現状の説明を求め、無事ではあると判明はするものの、それだけで家族らを納得せしむる事はなかった。
 しまいには対話回線がパンク、電子対応が不可能となり、遂にはアナログな電話回線まで使って逐次説明謝罪し続ける羽目になった。

 そしてそのコールは、翌日になって現場にいる生徒らが各々の家族に安全の確認と共に充実した林間学校の内容を興奮げに自慢する連絡を送るまで続き、その間容赦なく教師全員の体力と精神をゴリゴリと削り取っていった。

 悲劇は林間学校から生徒らが無事に帰って来てからも続き、各方面への謝罪と説明に東奔西走した教師たちのライフは既にゼロとなり、職員室はさながら野戦病院の様相を醸し出していた。

 引率していた教師らは被害者側であった為、コール地獄は免れたものの、その代わりに昼夜を徹して作業にあたっていたので、体力を削られたという点では同じである。

 が、宇宙恐竜のお肉を喰らって「極限強化」状態となった引率教師らは元気溌剌。
 学校での出来事等露とも知らぬ彼らは、例年とは比べ物にならない程、多大なる成果を上げた林間学校の報告をいざせんと、職員室に入るなり、その惨状を見て驚いた。

 あわてて過労で液状になった教師らを仮眠室に押し込むも、その際にうわ言の様に知らされた彼らの残務を引き継いで休む暇もなく四苦八苦する事となり、かなりの時間を取られてしまった。

 やがて全て片が付いた頃には全員が死にかけのコオロギの様になり、最早一歩も動けない程疲弊していた。
 それでも最後にルーシー達に謝罪すべく駅に向かって街中を移動する様子は、まるでゾンビが徘徊している風にしか見えず、待ち行く人々らを大層「ぎょっ」とさせた。

 こうして林間学校が終わった数日後、学年主任の代能まことと担任の阿賀原きらりを筆頭に、過労と寝不足でフラフラになった学園の全教師一同はコースト保護院のルーシーと慧之久、そして先に帰郷していた理仁亜の元に赴き、地に頭をこすりつける勢いで土下座謝罪した後に入学前の提案「校外学習の不参加」を遵守する旨を誓った。

 哲人にエスコートされ戻って来た理仁亜を泣きながら離さなかったルーシーは、先生方が謝罪に来ると理仁亜に告げられ、当日、最初はチクリと文句の一つでも言ってやろうかと思い、柄にもなく腕を組んでむんっと迫力なく身構えていたのだが・・・。

 まことをはじめとする、先生方の

「もうこんな目に遭うのは懲り懲りだ、頼むから理仁亜を参加させないでほしい」

 と言わんばかりの勢いに驚き、かえってなだめるのに必死であった。

 一体どれほど彼らを追い詰めたのであろうかと心配になったルーシーは、令と春香(とついでにその場に居合わせたさわこ)に協力してもらい、先生方を「もこやん」に招待し、労う事にした。
 彼らには休息が必要だ。

 折しも、「宇宙野生生物(食肉化)研究所」から宇宙恐竜のお肉の残りが届いていて、どうしようかと相談していたところだ。
 哲人が持って帰った分も加え結構な量がある。
 丁度良い、彼らに試食してもらおう。
(無論、宇宙恐竜のお肉の匂いをうっかり嗅いでしまったエビゾーがしめやかに脱糞してしまったのは言うまでもない)

 そういう事となったので、宇宙恐竜のお肉と合わせて他の宇宙ジビエも使った、超豪華なお好み焼き「宇宙ジビエミックス玉」を振る舞ったところ、先生方の美食家な細胞に極みの一撃を与え「極限強化」状態となり、みるみる精気を取り戻していった。

 宇宙恐竜のお肉を殆ど食べられなかったきらりに至っては、号泣しながらこれを貪った後、あろう事か令に忠誠を誓い、困惑させた事でまこととかえでを怒らせ、彼女らの放つ「まことタッチ」を喰らってカンストダメージを受けズタボロに轟沈した。

 元気を取り戻し過ぎて力が暴走した先生方は、ルーシー達へのお礼もそこそこに、その足で疾駆し、爽やかな汗を流しながら、茨城までダッシュで帰っていった。

 まこととかえでを含む引率教師らは林間学校で何度も口にして耐性が出来ているので疲労が回復した程度で済んだが、最早その場に残っているのは彼女らだけだったので、ダッシュで消えた他の先生達の代わりに丁寧にお礼をした後、気絶したきらりを引きずって普通に帰っていった。
(まこととかえでは、哲人の姿が見えない事にちょっぴり残念に思っていたところ、何故か復活していたきらりにその事を「あれれ~? 真面目ちゃんな二人にしちゃ珍しいにゃ~? そんなにあのイケオジがよかったのかにゃ? ニヨりんぱ☆!」と揶揄われたので、「まことタッチ・マキシマムドライブ・エクストリーム」を食らわせ、きらりをきらりブレイクした。全くもって、懲りないヤツである)

 お肉の効果を知らない令やルーシー達は呆気に取られ、ただ茫然と見守るばかり。
 そんな有様を見て、理仁亜とさわこはくすくすと苦笑するのであった。
(エビゾーは宇宙ジビエの香り溢れる店内に怯え、いるか公園に逃走したところで、公園に住まう猫たちに「可愛がられ」て、泣きながら戻ってきた)

 かくして以降、理仁亜は校外学習の不参加を許可される事となった。

 だが、それで理仁亜の学園生活が灰色に戻ったといえば、そんな事はなかった。
 校外学習などがある日も含めて、修子らと体操に打ち込む事が出来たからだ。

 はじめ理仁亜は、自身も付き合うといってくれたさわこと二人で、欠席した日に修子と練習に励むつもりであったが、なんと優華までもがその同席を申し出てきた。

 「あれ程理仁亜を嫌っていたコヤツが何故?」というこの珍事には理由がある。

 宇宙恐竜のせいで謝り損ねた優華は、後日、終業式の為に学校に戻ってきた理仁亜をみるなり、飛び上がってくるっと空中で一回転し、その勢いのまま、某悪の科学者も真っ青になる位華麗にジャンピング土下座を「ズシャア!」とキメた後、泣きながら

「ごめんなさい陸奥さん! わたくしのせいで貴女と唐竹さんに致命的な致命傷を与えそうになってしまった事は確定的に明らかですわ! 「汚い、流石優華汚い」と罵ってくださって構いませんわ! うああぁぁあ~~!!」

という、インパクトだけは破壊力ばつ牛ンの謝罪をした。
 何を言ってるのか分からなかったが、謝りたいという意思だけは伝わったので、困惑しつつも理仁亜は泣きじゃくる優華をそっと抱きしめ、謝罪を受け入れた。

「紅鶴さん、大丈夫、問題ない、よ・・・・。ほら、こうして皆無事じゃない・・・・謝る事なんてない、よ・・・ねっ?」
「あ、あうぅ・・・・貴女の優しさが有頂天ですわ! 黄金の慈愛の塊で出来た陸奥さんは流石格がちがいますわぁ! 有難う、有難うですわ・・・・! うわぁぁ~~~・・・・!」

 この様子を見ていた修子とさわこには、べえべえ泣く優華を抱きしめて優しく撫でる理仁亜から後光が差して見えたという。
(理仁亜の胸に顔を埋めた優華は、その余りの心地良さにほぼ逝きかけた)

 とまあ、こういう出来事があって和解(?)した二人は仲良くなり、共に体操に打ち込もうという事になったのであった。

 加えてこの他にも、一同が体操に集中しようという気持ちになった理由がある。
 新たなる仲間が加わり、部員が6人となった事で、公式団体戦参加規定を満たし、全ての体操の競技大会に出場できるようになったからである。

 謝罪から戻って来た先生方が「極限強化」状態になって元気が暴走し、校庭を走り回っていて落ち着く気配が全くなかったので、やむなくまことが代わりに終業式を行った後の事である。
(まこともまぁまぁ苦労人である)

 体操部一同は夏休み中の練習について相談する為、練習場に集まっていた。
 大事な後輩達を危険な目に遭わせた、だらし姉ぇ顧問を未だ許していない修子は

「なに私の大切な後輩を死にそうな目に遭わせちゃってんの? アンタ顧問としての自覚あんの? 後輩の未来の光を奪う事などゆ゛る゛さ゛ん゛からね! ちょっと聞いてんの!? あと、何喰ってんのよ!? 美味しそうじゃないの!? アタシの分はちゃんと残してるんでしょうね!?」

と言いながら、彼女の得意技である幻幽掌できらりの腹のお肉をタプタプしていた。
 あの勢いから見ると、修子は本気で突いているようだが、きらりの駄肉は波紋の様に広がってその威力を受け流している。見事な体術だが腹が立つ受け方である。

 それを見ていて、色々思い出し頭にきたさわこも「そうだよ」と便乗し

「ホントだよ! あぁん!? (パァン!)死にそうだったんだから! あぁん!?  (パァン!)反省しなさいよ! あぁん!? (パァン!)この、あぁん!? (パァン!)呑気か!? あぁん!? (パァン!パァン!)」

と、きらりのケツをリズミカルにはたいていた。だが、きらりはというと、

「え~? 皆何ともなかったからいいじゃん、いいじゃん、スゲーじゃん? 勿論反省してるよぉ? ごめんなさーい、ペコりんぱ☆! なんつって! フフフッ♪」モグモグ

と、理仁亜がお土産に持ってきた「宇宙恐竜焼き(デラ版)」をもりもり喰らってご満悦で、体中を覆う堅牢な駄肉のガードも相まって小賢しい折檻等どこ吹く風。
 その受け方がなまじ見事なだけに、逆に駄目さ加減が天元突破していた。

 更に腹立たしい事に、これだけ飲み食いしていて、駄肉が少しつまめる程度で済んでいるというズルい体質をしているだから、とことん命冥加なヤツである。
(この「宇宙恐竜焼き」は粉モンの方の、所謂「いか焼き」風のものである。「もこやん」の面々が試作してみた所、予想以上の仕上がりであった為理仁亜にお土産として持たせたのであった。多少は日持ちするので、宇宙真空保冷ボックスに入れておけば一日ぐらいは持つ。味付けは通常版、デラ版のほかにネギ焼き風、和風デラ版、デラぽんと様々なバリエーションがあったのだが、全てきらりに喰らい尽くされてしまい、その事もまた修子をキレさせる原因となっている。食べ物の恨みはコワイ!)

 優華はちゃっかり自分の分だけ確保していた「宇宙恐竜焼き」を食べながら、

「いいですわ、もっとおやりなさいなwww」m9(^Д^)プギャー

と、すっかり観戦モードで煽る様に応援するばかり。
 本来ならきらりと一緒にタプられているハズなのに、何故此奴がこんなに調子ぬっこいていられるのか?には理由がある。

 優華は林間学校から戻ってすぐに、皆の無事と事の顛末を修子へ報告しに行った。

 己が命より大事な後輩達の心配をする余り、同じ練習場で練習している女子剣と柔道部に八つ当たりし、気絶した部員達の山を築いていた修子は、五体無事な優華を見て安心し、一時は暴走をやめたものの、優華の話を聞くなり

「命を懸けて仲間を守るのが使命たる体操部員が、事もあろうに仲間の命を危険に晒すなどと! 今の貴女は、体操の屑星よッ! 弁えなさい、優華ッ!」ビシッ!バシッ!ドガッ!
「く、屑星!? ぐぉ~~~~っ!! びぶ~~~~~っ!! ><」バゴッ!ボガッ!ドシャッ!

と、怒り狂った修子に、何よりも先んじてボコられ、目を><にして気絶部員の山に積み上げられていたからであった。
 禊は既に済ませているということである。

 理仁亜はというと、そんな面々をオロオロしながら見守っていた。

 と、一同がどったんばったん騒がしくも楽しそう(?)にワチャワチャやっていた、そんな時である。
 開け放たれた練習場の扉の両端に隠れる様に様子を伺いながら、見た目がそっくりな二人の女生徒が

「あの~・・・」「入部したいんですけど・・・?」

と、おずおずといった感じで訪ねて来た。

 その声を聞いた修子の行動は素早かった。
 その目をギラリと怪しく光らせた瞬間、それまでタプタプしていたきらりなど放って、人間離れした色即是空な動きでもってぬらりと二人の背後へ一瞬にして回り込んだ。

 そして驚き戸惑う二人の腰にがっちり手を回し、有無を言わさず、いまだ「宇宙恐竜焼き」を喰らい続けるきらりの前にひき据えると、開口一番に

「この二人を入部させたいのですが、構いませんねッ!」

と言った。きらりも

「いいよ~。桶りんぱ☆!」

と、ろくに二人を見もせずに、もぐもぐ口を動かしながらてきとーな感じでこれを承認した。

 いきなり引っ立てられた二人は身をよじって抵抗を試みるものの、修子の手に込められた

「逃がしはせん・・・・お前らはアタシと共に、青春の汗を流すのだー!」

という意思が放つ圧倒的なまでの威圧感に振り払う事も逃れる事も出来ず、

「「ヒッ!」」

と声を上げて縮こまるのみ。

 これには流石に驚き、黙っていられずに

「いやいやいや!お名前も聞かねーでそれは幾ら何でもいきなりが唐突すぎじゃござーませんこと!?そもそも論の万が一に、ウチじゃのーてとなりで練習という名の修行しとる女子剣に入りたかったのかもしれねーでござーますのよ!?」

と、こういう時に限ってもっともなツッコミを入れる優華。

 その言葉には隣で練習しながら

「いいなぁアレ・・・私にもお裾分けしてくれないかしら・・?」

とチラチラ「宇宙恐竜焼き」の様子を伺って居た|伊藤人臣《いとうひとみ》も思わずウンウンと頷いた。

 と同時にその隙を見逃さなかった同級生でライバルである|桃屋盾子《ももやじゅんこ》の放った痛烈な小手を喰らい、悶絶した。コテ!バシィーン!イッターイ!><

 しかし時既に時間切れであった。
 悪魔の様な凄惨な笑みを浮かべた修子が強引に電子署名を書かせ、学園管理AIへと送信した入部届はたった今、受理されてしまった。

 これでこの二人は、校則に基づき最低でも一か月は体操部から退部できなくなってしまった。もっとも、この|修子《修羅》が彼女らを逃すとは思えないが・・・。

 新たなる部員を獲得した喜びの余り、無数に分身して見える程狂喜乱舞する|修子《羅刹》と、|その舞《ハードラック》に巻き込まれて|吹き飛ばされる《ダンスッちまう》柔道部員たち。
 周りに見せつけるかのように「宇宙恐竜焼き」を喰らい続けるきらり。
 それを悔しがり、そのたびに盾子に一本入れられて悶絶する人臣ら・・・・。
 これらの騒ぎから目を逸らして見なかった事にし、理仁亜とさわこ、優華は事後確認となってしまったこの二人の詳細を尋ねた。

「えっと・・・・|体操部《ウチ》で良かったのかな・・・・?」
「つっても、もう飛んでっちゃったから、ひと月は辞められないよ?」
「それ以上に、そう簡単に|修子《夜叉》さんから逃げられるとも思えませぬわ。ほんとのほんとに、大丈夫で、問題ないんでごぜーますの?」

 本気でこの二人を気遣う理仁亜達。だが、二人は戸惑いつつも意を決して首肯する。

「はい」「体操部で」「大丈夫で」キリッ「問題ないです。」キリッ
「「私たち、陸奥さんみたいになりたいんです!!」」ギュギュッ!

 左右対称のポーズでフンスと迫る二人。突然の告白(?)に驚く理仁亜達。

「え、えぇ? わ、わたし・・・・? え、えっとぉ・・・・? あ、あうぅ・・・・。」
「ギュッってしたわ! やったね理仁亜! 彼女が二人も出来たじゃないのさ!」
「えぇ、ギュッてしましたわね! 流石は陸奥さん、格が違いますわ! その全てかなぐり捨てた魅力に性別等無意味に関係ござーませぬことですのよ!」ヒャッハー!
「みりょっ!? かの? うぇ? ええっ!? あ、あうぅ・・・・。」プシュー

 尚もフンスフンスと迫る二人。面白がって揶揄うさわこと優華。困惑する理仁亜。

 何やら場がカオスと化したので、変わってこの二人の事を説明しよう。

 この二人の名は「|守門来羅《もりかどらいら》」と「|楓鼓《ふうこ》」という。
 理仁亜らと同じく一年生で、ご覧の通り(文章でそれは無いだろ)双子である。

 半分メカクレになっているが、可愛らしい顔つきをしている。
 姉妹で左右対称となっており、右に隠れているのが来羅、逆が楓鼓である。
 かなり小柄な体格だが、出る所は出ているようで、少なくとも優華よりは胸はある。

 彼女らは園芸部に所属し、毎朝校門の花壇に水やりをするのを日課とする、大人しく、そして心優しき可憐な乙女達である。

 その愛らしい様は常に左右対称になっていて、それを見た他の生徒から「南陵神社の狛犬ツインズ」等と呼ばれ、親しまれている。

 実際、彼女らの実家は神社で、学園近傍にある「大洗戦姫神社」の宮司一家である。
 そして彼女らもまた、巫女であるので、この呼び名は強ち間違いではない。

 さて、この「大洗戦姫神社」にはある一人の女傑が英霊として祀られている。

 その人物の名は「東嵐《ひがらし》りほ」。
 戦後まもなくの混迷期に活躍した戦姫闘技術の達人で、姉である「東嵐かほ」と共に、数々の伝説を打ち立てた戦姫である。

 実はここ南陵学園は、過去には女子高であった。
 忌まわしき終末戦争が終結し、30年程経ってようやくコロニー等に疎開していた人々が地上へと戻り、かつての活気が戻りつつあった時代に共学へと変更された所へ、彼女は親元を離れ入学してきた。

 しかし入学してすぐに、いきなりこの学校が廃校の危機にさらされたのである。
 まだまだ地上には人口が足りておらず、学校もバラバラだと管理しづらいから、統廃合しちまおうぜ!というやる気のないフザけた風潮が生まれたからである。

 南陵学園も対象となった。
 理由は、「過去に目立った実績を上げていなかった」という事のようだ。
 戦前の活動までやり玉に挙げるなど、理不尽極まりない。憤るりほ。

 彼女は戦乱を生き抜いた母・ちほから、姉と共に戦姫闘技術を学んでいた。
 その腕前は姉妹共にかなりのもので、ちほをして、既に自身と同格であると認めるほどだ。
 そしてちほが仕込んだ戦姫闘技術の苛烈なモットー通り、りほは拳でもって希望を取り戻すべく、早速行動に出た。

 かくして、「だったら実績を上げればいいだろ!」と言わんばかりに、有志を募ったりほは、4人のクラスメイトと共に地方戦姫闘技大会に出場、見事優勝を果たした。

 その後、5人の活躍に感銘を受け、仲間に加わった者達の総勢30名が全国大会である全国戦姫闘技舞術会に参加。
 大穴の下馬評を覆し、並み居る強豪を打ち破り、最後に対戦した実の姉・かほをも倒し、遂には全国制覇を成し遂げてしまったのである。

 これには当時の文科省も面食らった。弱小高が栄光を掴んでしまったのだから。

 普通はここで彼女らを認めるのが、筋も外聞も通っていたというものだが、何を思ったのか彼らは大人気なく、健気にも戦い抜いた彼女らを叩き潰すべく、更なる刺客を送り付けたのである。

 それは、戦乱の世を生き抜いた|淑女《猛者》達から直接|薫陶《レッスン》を受けた、一騎当千の大学生らからなる選りすぐりの精鋭集団150名、大学選抜戦姫衆である。
 その力は、直に戦乱の世を生き抜いてきた|淑女《猛者》達をも超えているとさえいわれていた。

 そして極めつけはその集団をも上回る|拳力《レディパワー》でもってこれを率いる天才少女・|岡山紗理奈《おかやまさりな》の存在である。

 彼女は、その才能に惚れこんで直接指導した|スメラ《グランマ》をして、「いずれ自身をも上回る存在となる」と言わしめた程の、まさに|拳神《ノーブルレディ》といっても差し支えない戦姫であった。

 当時のお上は、戦後の復興策と平和を勝ち取った象徴というプロパガンダとして、戦姫闘技術を興行化しようと画策していた。
 この戦乙女達はそうして集められたのだ。

 そして高校生には危険すぎると禁止されている、「大戦姫決戦闘技武術舞台」という、決戦の舞台に選ばれたフィールドにて行われる最大150対150のバトルロワイヤルで、この|淑女《猛者》達と戦い打ち勝てと言ってきたのだ!

 今度はりほが絶望する番であった。
 こちらの手勢は30名。どう考えても勝ち筋が見えてこない。
 幾ら善戦したところで相手はそれぞれが百戦錬磨の手練れ、大将の紗理奈と相対するまでもなく、数の暴力でひねりつぶされてしまうのは目に見えていた。

 心優しきりほには、自身よりも、これまで共に戦ってきた仲間が無残にもズタズタに引き裂かれて絶命してしまう事が耐えられなかった。

 実際、この対戦方法は試合中の生死は問われない。
 文字通りの|殲滅戦《舞踏会》。参加する際には、遺書を書くことが義務付けられている程だ。

 散々悩んだりほは、やむなく下る事を決意し、棄権する旨をしたためた書を持ち、盟友となった南陵学園生徒会長・|飛車川桔梗《ひしゃかわききょう》と共に文科省へ赴こうとしたその時、まったという声があがった。

 りほが振り返ると、そこにはなんと姉・かほが、かつて鎬を削った|強敵《とも》達を引き連れて参上していた。
 聞けば、助太刀に参った、共に戦おうとのこと。
 これで急造ではあるが、数の上ではこれで150対150となり、非常にか細くはあるものの、光明が差して見えた。
 再び闘志を燃やすりほ。棄権の書を破り捨て、戦友となった|強敵《とも》達と共に、いざ決戦の地へとむかった。

 戦いは苛烈を極めた。
 戦闘巧者たる戦姫達を前に、一人、また一人と倒れていく戦友たち。
 だが彼女らも、それぞれが生地にてその人ありと言わしめた程の|淑女《猛者》。ただではやられず、次々に相手を道連れに果てていくのであった。

 彼女らにはもう後はない。その面に漲る必死の気迫が実力差を覆したのだ。

 そして戦いはいよいよ最終局面に差し掛かった。
 決戦場に残るのは、りほとかほの二人だけ。
 相手は紗理奈と、彼女に着き従う|三戦姫《ビックスリー》と呼ばれた戦乙女達。

 りほとかほは、姉妹ならではの息の合ったコンビネーション「戦姫阿修羅鏡影身」をもって、この|三戦姫《ビックスリー》を見事一息で打ち破るも、それでも紗理奈はそんな姉妹をも更に上回った。
 まさに彼女は|闘神《マドモワゼル》と呼ぶに相応しい、人間離れした実力の持ち主であった。

 二人がかりで挑んでも、逆に追い詰められてゆく二人。
 突きはいなされ、蹴りは打ち払われた。最早成す術はないのか。

 だがりほは希望を捨てなかった。
 かほに自らの体を打たせ、その勢いを持って、自らの命をも燃やし尽くす程の気迫を纏った特攻をしかけ、見事紗理奈の放つ拳ごと彼女を打ち抜くも、りほもまたその拳を身に受け刺し違えた。

 ゆっくり崩れ落ちる両者。

 そして最後に立っていたかほが勝鬨を上げ、ここに希望を捨てなかった少女らの勝利が確定した。彼女らはそのモットー通り、自らの居場所を守ったのである。

 死合後、紗理奈は見事な闘志を見せたりほの健闘を讃え、自らが身に着けていた手甲をりほに贈ったのであった。
 
 この瞬間から彼女らは無二の盟友となった。

 この凄惨なる戦いの後、戦姫らの戦いは称賛されはしたものの、同時に戦姫闘技術の危険性を世に知らしめる事にもなった。最早太平の世には必要のないものである。

 お上の目論見は崩れ去り、戦姫闘技術は徐々に廃れていく事となる。

 りほとかほは、そんな時代の流れを感じ取り、またこの戦いの原動力となった熱き想いを後世に伝える為、戦姫闘技術を安全なスポーツへと変革する活動を行った。

 こうして、熱き乙女らの魂を引き継いだ競技・演舞体操術が世に誕生した。

 りほもまた、数々の栄光と、新たなる競技を創出した功績を讃えられ、その死後、彼女と共に戦った戦姫達と共に、この「大洗戦姫神社」に、英霊として祀られる事となったのである。

 このりほをはじめとする、幾多の英霊達の活躍とその胸に秘められた熱き想いを子守歌の代わりに聞かされて育った二人は、体操に対して強い憧れがあったのである。

 だが、彼女らは、その生来の大人しい性格に加え、あまり恵まれぬ小柄な体格からその道を諦めていたのであった。

 心優しき彼女らは、命を愛で、育む事もまた、乙女がとり得る道の一つであると、神職である両親にやさしく教えられ、こうやって園芸に精を出していたのである。

 そんな彼女らにも転機が訪れた。
 ある時、日課の水やりを終え教室へと向かおうとしたとき、練習場にて群れる人だかりの向こうに、懸命だが楽しそうに舞う理仁亜の姿を見た。

 それはまるで、慈愛の地母神が新たなる生命の種を振り撒き、その誕生を祝福する神楽を舞っているかのように見えた。思わず他のギャラリー達同様に見とれる二人。(その横では優華がボンクラーズにクララレアシラルを塗りたくっていた)

 しかしそれを見ても尚、二人は今一歩を踏み出せなかった。

「我らには自分の道がある。|彼女《理仁亜》の様に、強く美しくはなれない・・・」

 そう自分たちに言い聞かせて。

 モヤモヤする気持ちを抱え、浮かない日々を過ごす彼女らに、運命の|刻《とき》がやってくる。
 そう、「襲来! 宇宙恐竜! 嵐に飲み込まれる林間学校」事件である。

 実は彼女らは、理仁亜達のクラスを奈落へ叩き落したバスに乗っていたのである。(ついでに、桃屋盾子も乗っていた。この二人と同じクラスなのである)

 彼女らの乗ったバスは理仁亜達を谷底へ突き落した後、何とか持ち直しキャンプ場に辿り着くも、その後の様子を見に戻る間も無く|隕石《コンテナ》が落下、慌てて避難する。
 地面に激突する|隕石《コンテナ》。

 二人は他の生徒らと共に、衝撃で軋む管理施設の中で抱き合って震えた。

 やがて恐ろしい衝撃が収まり、表へでてその惨状に愕然とする一同をよそに、二人は事故現場の様子を見る為、真っ先にキャンプ場の端へと駆け寄った。

 と、同時に、|隕石《コンテナ》から、あの恐ろしくも勇ましい宇宙恐竜が飛び出した。
 そしてその暴獣は、あろう事か彼女らが憧憬してやまない理仁亜に、禍々しい凶拳を打ち込んだ。

 その光景を目にし、彼女らと一緒に様子を伺っていたキャンプ場に居る者達同様に、無残にも吹き飛ばされる理仁亜の姿を想像し目を覆った。

 だがそうはならなかった。

 恐る恐る覆う手をどけると、なんと理仁亜が、あの恐るべき凶拳を自らの手で受け止めていた!
(クリアガードは透明なので、キャンプ場からだとそう見えた)

「おぉっ!」と歓声が沸き上がる。二人もまた、理仁亜の勇気に魅せられた。

 だが宇宙恐竜は強かった。
 無慈悲にも吹き飛ばされるさわこと、追い詰められる理仁亜。
 自身が巫女である事も忘れ、二人は必死に神に祈る。

 そしてその祈りは届いた。

 宇宙恐竜の凶爪が振り下ろされる、まさにその時。銀色の閃光と共に、一人の|武人《哲人》が理仁亜の元へ舞い降り、瞬く間にこの恐るべき暴獣を討ち取った。

 その激しい戦いを見て沸き上がる一同をよそに、二人は夢見心地であった。
 |武人《哲人》の拳捌きも凄まじかったが、何より、宇宙恐竜に怯むことなく立ち向かった理仁亜の勇気と気高さに、二人は感嘆した。

 一言でいうと、「惚れ申したーーー!!!」である。
 これでもう、彼女らの情熱という名の|乙女力《おとめぢから》を止められるものは居ない。

 そして勇気を振り絞って、ワチャワチャやってる一同の元を訪れたという訳である。

 こうして、来羅と楓鼓の二人を仲間に加え入れた南陵学園体操部は、わき目も触れずに体操に打ち込んだ。

 一部の授業を無視して練習できるというのは、かなりのアドバンテージである。
 その甲斐あってか、最初の秋季全地球圏体操大会に優勝したのを皮切りに、理仁亜が卒業するまでの間、全ての大会を制し、全人未踏の5連覇を成し遂げる事となる。

 ・・・・のだが、それはこの場で語る事ではないだろう。

 だが一つだけ語るとすれば、理仁亜の高校生活は希望と情熱に満ち溢れたとても充実したもので、彼女のかけがえのない財産となった、という事であろう。



 時は瞬く間に過ぎ、3年後の早春、2月の下旬。
 理仁亜達3年生はいよいよ卒業し、各々が選択した大学へと進学する頃合いとなった。

 だが、その前に学生生活の最後を締めくくる一大イベントがある。
 そう、「修学旅行」である。

 大学がまだ任意に試験を受けて進学する形式の時代においては、勉強の時期を考慮して、だいたい2年生の夏から秋口がシーズンであったが、義務教育となった現在においては受験勉強をする必要がないため、この時期へと変更されているのであった。

 そのため、「修学旅行」と銘打ってはいるものの、内容としては完全な物見遊山、「卒業旅行」の意味合いが強い。

 どうせ行くなら皆でいこーぜ!という事である。

 実際、この時期にはどこの観光地にも羽目を外し過ぎたおバカさん達が出没してまぁまぁやんちゃな「やらかし」をする例が枚挙にいとまがない。
 だったらきっちりお目付け役を付けておいた方が皆幸せになれる、という訳なのである。

 学生達にとっても、クラスメイトとワチャワチャ出来るのもこれで最後である。
 全ての面倒事を片付けた3年生たちは皆、いずれもニチャァ・・・と笑みを浮かべ、これから体験する行事に期待を胸膨らませていた。

 一方理仁亜はというと、一人メモアプリを開き、体操のトレーニングメニューを考案していた。
 彼女はもうか弱い乙女ではない。いっぱしの|体操選手《フロイライン》である。

 最早断ちがたい絆で結ばれた盟友であるさわこらを自分の都合に巻き込む事をヨシ!としなかった理仁亜は、渋るさわこらを説得し、一人だけ学校に残る事となった。

 そして修学旅行の期間中、引継ぎも兼ねて、体操部の後輩達と最後の練習に打ち込むつもりであった。
 それは一週間ある。ちょっとした合宿となろう。

 修子もこんな気持ちで自身らと練習に臨んでいたのだろうなと、嬉しいやら楽しいやら、不思議な気分になって鼻歌混じりにメモを書き連ねていく理仁亜。

 だがそんな理仁亜の様子を、さわこは苦虫を嚙み潰したような表情で見つめていた。

 さわこもまた、理仁亜と共に最後の旅に出る事を諦めてはいなかった。|体操選手《フロイライン》はわずかな希望が残ってさえいれば決して屈しないのである。

 だが惜しむらくは、さわこには星永家の面々がもつ不思議な神通力は備わってはいない。
 幾ら「理仁亜はあたし達が護る!」と意気込んだ所で、宇宙船に乗り込んだ途端に、あの高潔なる戦士・宇宙恐竜をも超える災厄に見舞われるのは目に見えていた。

 |来羅《ライ》・|楓鼓《フー》の二人に、耳に宇宙蛸が憑りつく程に武勇伝を聞かされた英雄・りほも、大学選抜戦姫衆とまみえようと悩んでいた時はこの様な気分であったのだろうかと、悔しいやら悲しいやら、不思議な気持ちになって落ち込むさわこ。
 その様子に見かねた優華がさわこに問いかける。

「理仁亜さん・・・・ほんとのマジに学校に残るのでごぜーますの? わたくし達が一緒にカガッと出来るのも今のうちだけなんですのよ!? 理仁亜さんの居らん修学旅行になんて未来はありませぬわ!」ココハユズレマセン
「うん・・・・ああ見えて自分の信念は絶対曲げないんだよね・・・・あの娘はもう立派な|体操選手《フロイライン》だよ・・・・ハァ・・・・」
「かといってこの様な事・・・・わたくしはどちらかと言えば大反対ですわ! ・・・・ハッ、そうだ! あのお姉さまは!?」
「この時期、丁度春姉ぇはクィンさん(春香の旦那)と沖縄に行ってて、お店におばちゃん一人だけになっちゃうから二人とも無理なんだよ・・・・」
「うぬぬほ・・・・!! では、他に自由がフリーな縁者という家族は居らぬのです? お姉さま方の誰かなら、災難をボコれると聞きましたわ!」
「ンー、まぁ確かに、居るにはいるよ?二人ほど?」
「おお!! ではその方々をお連れすれば!」
「でもメインとオイラーはまだ5歳と2歳だよ?」(春香とクィンの子供である)
「ぐばっ!! そ、そんなぁ・・・・むぐ・・・・最早時既に時間切れなんですの?」ガクッ
「確かに二人を連れてっても事故は起こらないんじゃないかな? でもそんな事したら絶対おばちゃんにぬっ頃されちゃうよ? 火を見るよりも確定的に明らかだね」
「はわっ! あ、あがが・・・・あの|闘仙《グランマダム》を相手にするなどと・・・・! 命が幾らうず高く積みあがってもノンスタックですわ・・・・!」ガクガク
(実は、令は失われし戦姫闘技術の達人である。2年の夏頃にコースト保護院で合宿をした際、調子こいた|優華《アホ》が組手を吹っかけて、|優華《バカ》は勿論、|修子《巻き添え》まで子ども扱いされボコられた挙句、遂には理仁亜以外の部員全員「うろたえるな小娘ども!」されてトラウマになったのである。ちなみにいままで名前だけ出て来ている春香は、クセの強い星永家の面々としては珍しく際立った特徴のない一般人である)
「そも、学校側は部外者参加禁止ってスタンスは変えてないしね。AIにも確認したから間違いないよ」

 厳しいルールを遵守する事で秩序を維持しているこの時代においては、そう簡単に例外を認めるわけにはいかないのである。
 ここで緩めてしまうと、
「だったら私も」
「俺も」
「ウチも」
「ワイも」
「ミーも」
「拙者も」
「某も」
「おいどんも」
となってしまう事は確定的に明らかである。

 どこも自分たちが悪しき前例を作ったという不名誉を避けているのである。
 保守的なのは今も昔も変わらない。

 スプリングビッグポートシティで認められていたのは、ひとえに宇宙賢聖の働きかけがあってこその事であったのだ。
 彼は一教師の枠等には収まりきらない、一角の人物なのである。

 だが流石に茨城の地にまでは、そんな宇宙賢聖の知啓も及ばない。

 ぐぬぬあががと、二人が身もだえして藻掻いている所に、きらりが通りかかった。

「( ,,`・ω・´)ンンン? 何してんのかにゃ~? もしりんぱ☆?」
「んぁっ!? ・・・・なんだきらりか・・・・いや、何とか理仁亜連れ出せないかなーって相談しよったところなのさ」
「あ~アレか~。何だぁそんなことか~。さわちゃんらしくない、事故なんてぶっ飛ばせばいいじゃないのさ~。ボコりんぱ☆!」シュッシュッ

 さわこの苦悩をかるく受け流し、シャドーボクシングの様な仕草で答えるきらり。
 そのフザけっぷりに怒りが有頂天になった優華が噛み破り・極を仕掛ける。

「ちょっ、貴女ねぇ! そう簡単にビギナーモードなとて楽になりゃ練習相手にもなりゃしませぬわっ! このっ!」バババ!

 無防備なきらりの腹の駄肉へ、得意技・|粧涙嘴突《しょうるいしとつ》を全力で打ち込む優華。
 この技は、(一部がかなり)細目の体格故に力で劣る彼女が、相手のガードを打ち破る一点突破の攻撃とするべく、三年間の研鑽の末に編み出した強力な貫き手である。
 名前の由来は「この技を受けて、それまでの努力を打ち砕かれ無残にも敗れ去った乙女らが流す涙で化粧をする事で、自身が更に強くなる」という事から来ている。

「ウヒャヒャwwww! 痒い痒い~wwww! そんにゃの効かないよ~だ! 弾き返しちゃうもんね、ほれ、ポヨりんぱ☆!」ポヨンポヨン

 だが、そんな彼女の自慢の技も、きらりの堅牢な駄肉は波紋の様に広がり、込められた彼女の自信と矜持を諸共に雲散霧消させてしまった。

「ぬく・・・・お、おのれぇ・・・・! わたくしは貴女の血でだけは化粧をしたくありゃしませぬわっ!」ガガガ!

 きらりにおちょくられて激昂する優華。何時見ても見事でムカつく受け方である。
(こうやって相手を怒らせ、生まれた隙を突くのがきらりのスタイルなのだ)

 あれでも、教師になる前はまこと、かえで、わかさと合わせて、天の川銀河宇宙オリムピックの体操地球代表選手、通称「ニューモデルカルテット」と呼ばれていた時代もあったのだが。
 わかさが脚を故障した後に彼女らは教職に就いたと聞くが、何がどうなって、あんなダメな大人が出来上がったのか・・・。
(ちなみに、この腹立つ技は「地母太神波紋衡」というれっきとした戦姫闘技術の受け技の一つである。体操の創始者・東嵐りほの、最も信頼する初期メンバー4人の内の一人、|文廣《ふみひろ》シャクティのみが習得出来たと言われている。先天的な肉体の素質がないと会得不可能とされる、幻の防御技である。完全なる失伝を防ぐ為、りほがシャクティに協力してもらう事で体操術にも継承されているのである。これを会得しているという事はつまり、きらりはシャクティと奇跡的に同じ体質を持っている、という事に他ならない。この事は、出来るだけ習得できるものに伝え、競技による受傷を可能な限り避けようとする、出会う事もないであろう未来の後輩達を気遣うりほの慈愛の現れでもある)

 とはいえ、この下らないじゃれ合いを見るのも、これが最後であろう。怒りよりも哀愁を感じてしまうさわこ。

 その時ふと、先ほどきらりが言った言葉を思い出し、さわこの脳裏に電撃が走る!
 そう、|隕石《コンテナ》から逃れる際、きらりの言葉に閃いたあの時のように。

 何時だってそうであった。
 試合で劣勢に追い込まれた時も、きらりが言い放った何気ない言葉で打開策を閃き、困難を打ち払った事は、一度や二度では無かった。

 悔しいが、こういう場面でのきらりの勘は本物である。
 このやっこは、腐っても一流の|体操選手《フロイライン》であると認めざるを得ない。

 そう、単純な話である。
 一人だけいるではないか、理仁亜をあらゆる災厄から遠ざけ、その身を完全に守る事のできる守護神が。

 きっと今回もやってくれるに違いない。

 常に無防備な状態のまま、刃を突き立てられ生命の危機に瀕している理仁亜に寄り添い、彼女を助ける為だけに遣わされたかのような一族。

 まるでそれは、理仁亜に特大のデバフを憑けて悦に浸ってる|運命の神《アホのワイ》に見かねて、

「これじゃ生まれてすぐ死んじゃう!サポートつけるお!」(^○^)

と、憐れんだ|良識ある神《ポジハメ》が救済してくれたかのようだ。

 その中でも、理仁亜と運命の赤い糸、いや、極太の赤い注連縄で雁字搦めにもやわれているあの武人なら。

「事故・・・・? ボコる・・・・? ハッ、そうか! その手があったか! ヨシ! こうしちゃいられない! 早速行かなきゃ!」ガタタッ!
「!? なっ、どうしたんですのさわこさん!? 何処へ行って出発するのです!? 手助けがヘルプになりますわよ!?」
「有難う優華! でも、理仁亜を助けられるのは、あの人しかいないよ!」
「あの人!? オジさまですの? あの方は今や遅し遥か銀河のおとぎ話なのでは!?」
「ちょ、何言ってるかさっぱり分からないけど、言いたいことは分かったよ! 大丈夫、問題ないよ! あたしにいい考えがある! (キリッ 良いから行くよっ!」ダバダバ
「うえぇ!? わたくし不安が胸に最高潮なんでござーますけど!? あ、ちょ! なんて華麗なバックステッポ!? お待ちになってさわこさ~ん!」ダバダバ
「ウヒャヒャwwwまことちゃんよりはやーい! wもうあんな所まで行ってるよ! うん、青春だねぃ! ・・・・がんばってね、さわちゃん。チアりんぱ☆!」フレッ

 何かを閃いたさわこは、優華を伴い、超有名なタイムスリップ映画のメインテーマをBGMに流す勢いでダバダバ故郷へ疾駆していった。

 それを笑顔で見送るきらり。

 このやっこは生意気にも狙って助言したようだ。
 きらりはやるときはやる女子なのである。

 だが、この後きらりは、「さて、後は若人に任せて、イカすきらりはクールに去るぜ・・・・」と恰好つけてた所を、職務からサボタージュしていたこやつを探していたまこととかえでに見つかり、「まことタッチ・ファイナルアタックライドオン」を喰らってディケイドされた後、職員室に連行された。

 一方、さわこらはダッシュで隣の栃木県の小山駅からスライディング乗車し、そのまま東京駅からリニア(理仁亜じゃない方)中央新幹線に飛び乗った。
(この時代になってなお、茨城県は唯一新幹線の駅がない県のままであった)
 その車中で優華がさわこに疑問をぶつける。

「さわこさん、過労が多忙のガーディアンのオジさまに、同行は無理が道理をフルスイングなんじゃごさーませんこと?」モグモグ
「普通ならね。ところで、何で最近理仁亜の機嫌が良いと思う?」モリモリ
「うーん? 後輩達とコラボな合宿を楽しみになさっておるからなのでは?」ガツガツ
「それもあるだろうけど。もうすぐ3月でしょう? 「もこやん」に帰って来てるはずだよ。理仁亜の守護神、哲兄ぃがね!」ゴックン
「・・・・! あぁ! 「還暦」でしたのね! ですが、「私も同行しよう」「ガーディアン院!」は不可能が禁止されてやがるのではなくて? まぁあの方がパーリオンすれば、少なくとも女生徒らの迸る|乙女力《おとめぢから》が超新星爆発するのは確定的に明らかで、疑問を張り倒して誤魔化せそうではありますわ?」ゴクッ
「フフッ・・・・まぁそれでもよさそうだけど。何も一緒に居る必要は無いんじゃないのさ? まぁ、見てなさい!」ニヤッ

 不安げな優華をよそに瞬く間に駅弁を平らげ、頬にご飯粒をつけながら大胆不敵に笑うさわこ。何やら腹案があるようだ。
 そうこうしている間に二人はスプリングビッグポートシティへと辿り着いた。



 一方その頃。「もこやん」の軒先を前に哲人が立ち尽くしていた。

 己の現状に疑問を感じ、仕事に精彩を欠いた事で、図らずも長期休暇を言い渡された事で、例年よりも早く生家へ戻って来たはよいのだが。
 何時にも増した暗い気持ちのせいで、中々扉を開く事が出来なかったのである。

 それは、ドキュメントをポカミスし、スペースローグを死ぬ一歩手前までしか痛めつけられない程に思わしくない精神状態のまま、もう何度めになるかも分からない

『何の成果も得られませんでした!』

という報告を、母・令にしなくてはならない重圧とが重なったせいである。

 そして、千〇脚を喰らう覚悟で(一度も殴られた事はないが)扉を開くと同時に、まだ昼にもかかわらず、旨そうにモダン焼きを食いながらビールを一杯ひっかけるオッサンを見た瞬間、そんな気分は吹き飛んでしまった。

 なんと15年振りに、|ジョーンズ《ハゲ》が地球に戻ってきていたのである。

『ハァ、ただいま・・・・ってうぉっ!? センセイ!? 何でここにセンセイが!?』
「いらっしゃ・・・・って、アラおかえり哲人。今年は随分早いのね!」
「うまうま・・・・ん!おお、哲人君か! 久しぶりじゃな!ガハハ!」

 再会を祝し、早速|ジョーンズ《ハゲ》の土産代わりの冒険談を肴に飲み交わす哲人。
 普段は全く飲まぬこの男も、この日ばかりは酒が進んだ。

「ガハハ! ・・・・それでな、そこから何らかの法則性があるんじゃないかとあたりをつけて見たらな、見事ビンゴだったんじゃ! 流石ワシ! さすワシ!」ゴクゴクプハー
『ほう。で、それを整理する為に地球へ戻っていらしたので?』クィッ
「いや、それもあるんじゃがの、実は・・・・って、令ちゃん、なんで哲人君のお好み焼き、めっちゃ豪華なの? ワシの普通のモダン焼きじゃよね!? えっ、なんで? どうして(電話で質問する猫感)?」
「気のせいよ、ハゲ。だからハゲるのよハゲ。うちのお好み焼きにケチつける気なのハゲ? 黙ってそれ食べてなさいよハゲ。あっ、哲人、焼きそばも焼く?」
「いや絶対違うよね!? めっちゃ美味そうじゃもん! ワシハゲとらんし! あとワシも焼きそばちょうだい、やくめじゃろ!? 哲人君、一口貰うぞい!(パクッ!・・・・って、んほぉおおお!! 何これ、滅茶苦茶美味いぃぃい! んほぉおおお!!」ビグンビグン

 横取りを見た令が放つ凄まじいまでの闘気を全く意に介さず、瞬く間に哲人のお好み焼き「宇宙ジビエスペシャルミックスモダン」を喰らい尽くす|ジョーンズ《ハゲ》。
 と同時に非常に見苦しいヘブン状態となり、悶絶した。
 どうやら|ジョーンズ《ハゲ》の細胞にフェイタルフレームだったようである。

 これで、|このハゲ《ジョーンズ》は、3日は眠れなくなった。

『これは不定期に送ってくる宇宙ジビエなんで、お客には出せないんですよ。賄いってヤツです。後、喰うとご覧の通りです。危なくて売り物にならないんですよね』
「うっほほ! こいつぁ美味いわい! もっと、もっと食わしてくれい!」ツヤツヤ
「うぬぅ! コイツ・・・・調子に乗るなっつってんのよ! フンッ!」ドゴォッ!
「うへっ!? ん? おお! 痛くない! 令ちゃんの宇宙ジェットの如き突きがまるでそよ風のようじゃあ! うっひょーい!」ピョンピョン
「ぬっ! このハゲェ・・・・そこに直りなさい! 引導を渡してあげるわっ!」シャキーン!

 元気が暴走し、ウザったらしく店内をゴキブリの様に走り回る|ジョーンズ《ハゲ》。

 とうとうキレた令がコテを両手に構え、カウンターから飛び出したまさにその時。

「こんちゃーっす!おばちゃん!哲兄ぃ居る!?」ガラガラ

とさわこ達が扉を開き、店内に入ってきた。



 とりあえず|ジョーンズ《ゴキブリ》は令に任せて、哲人は二人にアイス最中とお茶を出して、話をする事にした。

『久しぶりだなさわ吉。今更だが、最後の秋季大会も見事に優勝したって聞いたぞ。すごいじゃないか。悪いな、丁度大会の時期は、宇宙の一番遠い所が管轄なんでな、直接言うのが遅くなっちまった。メッセージだけでやり取りはあんまりだからな』
「フフフッ、まぁお勤めならしゃーないよ。まぁ、当然ッスよ、負ける気しないッスよ!って言いたい所だけど、正直よく勝てたなって思うよ。無様を晒して、修子さんにシメられるのが怖かったってのもあるけどね。まぁ皆で頑張ったからだよ。ウンウン」
「モグモグ・・・・まぁこのわたくしが居れば勝利など確定的に明らかですわ! ・・・・このお菓子美味しいですわね・・・・んぐっ!? 最中の皮が口ん中の上あごに張り付いて取れませんわ! き、気持ち悪いぃぃいいいい!!!」ドッタンバッタン
『ああ、あるあるwww急いで喰うとなりやすいんだよなそれ』
「アンタ、それ当分取れないよ? 頑張ってペロペロして皮溶かすんだねwアハハ!」

 口腔内の不快感にどったんばったんする優華を尻目に、居住まいを正し、改めてさわこに問いかける哲人。
 後ろではついに|ハゲ《ジョーンズ》が縛に着いたようだ。

『さて、それは置いといて・・・・私を呼んだという事は、別に優勝を報告しに来たわけでも、上あごに最中の皮を張り付かせに来たわけでもないんだろう?』
「・・・・!? ああそうだった! 哲兄ぃ、一緒に修学旅行に来てよ!」
『・・・・理仁亜か。勿論、そうしてやりたいが、部外者は参加できないだろう?』
「いや、そうじゃなくて! 兎に角一緒に来てよ! お願い! うぅ・・・」ウルウル
『??? 一体どういう事だ? 兎に角落ち着けさわ吉、君らしくもない。』

 要領を得ない説明に首をひねるも、とうとう泣き出してしまったさわこにただただうろたえるばかりの哲人。

 とその時、足元から話に割って入るものが居た。

 令にひっ捕らえられたのち、縄で簀巻きにされ、ゴキブリからミノムシに変態が変態した|ジョーンズ《ミノムシ》である。

「ガハハ! 簡単じゃよ、哲人君。つまりは、そのお嬢ちゃんは君に道中の護衛をしてほしいんじゃろ? な? アタリじゃろ?」ジタジタ
「あっこのハゲ! 神妙になさい! もうお白洲よ、控えなさいこのハゲ!」ギュウウ!
「! そうそう、そうだよ、哲兄ぃ! こっそり護衛しながらついて来てって事だよ! いい事いうね! 有難うハゲのおっちゃん!」
「! やっと取れましたわ・・・・そうそう、正解が大成功ですわよハゲ!」
「ガハハ! そうじゃろうそうじゃろう! やったぞい、これでもう一本じゃあ! ワシも最中ちょうだい! っていうかワシハゲとらんからね!?」ジッタンバッタン
「クッ、なんて強大なパワーなのっ!? ハゲの体から強烈な|生命力《ユニバース》を感じるッ!? なら倒してしまっても構わないわね!? 喰らえ、神〇拳!!」ズオッ!
「ぼふっあいであぐじゃがくぁwせdrftgyふじこlpぴやぁーす!!」ドシャッ
『! そうか、護衛か・・・・それは考えた事が無かったな。だが、私がMDFでついていった所で、マシントラブルなんかはどうしようもない。彼女の体質は強力だ。私一人ではカバーしきれんかもしれんぞ?』
「あっ・・・・そうだよね、何が起こるか分からないもんね・・・・うーん・・・・」
『修学旅行は一週間あるんだろう? 流石にガーディアンの職務を放棄して、しかもMDFまで持ち出して別行動する訳にはいかないぞ? いくらウチの分隊が理解あるほうだっていっても、流石にそこまでは許してはもらえまい』
「うーん、そっかぁ・・・・いい案だと思ったんだけどなあ・・・・」
「がっかりイリュージョンですわ・・・・ハゲもズルムケになりますわ・・・・」
「ふう・・・・やっと大人しくなったわ・・・・そうねぇ、私達が一緒に行けたらそれが一番いいんだけどねぇ・・・・。」

 現実を突きつけられお通夜の様な雰囲気になって落ち込む3人と|闘仙《グランマダム》。

 とそこへ滅びた筈の|ジョーンズ《ミノムシ》が特大の爆弾を放り投げる。

「落ち込みの水平線に沈んどるとこ悪いが、その前にワシの話を聞いてくれぃ! それで問題は全て解決するのじゃあ!」ジタジタ
「!? クッ、このハゲまだ・・・・このやっこは不死身なの!?」Σ(・□・;)
『えっ? ああ、そういばセンセイは何か言いかけていらしたんでしたっけ? お好み焼きで口キャンセルして言う前に縛られちゃいましたけど』
「そうだよ哲人君!(便乗 単刀直入に言おう! 哲人君! ワシはキミが欲しい! ワシと一緒に来てくれぃ!!」ジターン!

 |ジョーンズ《ミノムシ》の言い放った一撃は、パァンと破裂し、場は一気に水をうったかのように静まり返った。
 言い切った|ジョーンズ《ミノムシ》はドヤ顔だが、ハッキリ言ってドン引きである。

『え、ええ・・・・センセイ、私は確かに武術位しか能の無いヤツではありますが、その、そこまで拗らせては・・・・』ガクガク
「ええっ!? ハゲの上|┌(┌^o^)┐《ホモォ…》なの!? うわぁ・・・・」ドンビキ
「ハゲ×オサーンとかガチがとてとてに難易度ギガマックスですわ・・・・!」ドンビキ
「ハゲ・・・・やっぱり我が最愛の息子をそんな目で・・・・! |┌(┌^o^)┐《ホモォ…》等させるものか! ワニムの髪の毛一個、この世には残らない!」ズゴゴゴゴ…

 あまりの言葉の苛烈さに、NAVI=OSによって自動的にエキサイト再翻訳されてしまう程に怒り狂う令。

 必死に弁明をはかる|ハゲ《ミノムシ》。

「!? いやいやいや! そういうつもりで言ったんじゃ無いわい! えぇい、哲人君! キミも胸元を隠して、怯えるんじゃあない! ワシャ至ってノーマルじゃあ! 秩序にも混沌にも傾いとらん! 何時だって全てのアクマを呼び出せる状態をキープしとるわい! って、ほぎゃあああ! れ、令ちゃん、その恐ろしいまでのオーラを発するの止めとくれぇ! ほれ、エビゾーが泡吹いてひっくり返っとるぞ! 可哀想だと思わんのかね!? 許して、ねッねッねッ!? ワシの話を、聞いてくだされぇ!!」
『センセイ、秩序に傾いた方がストーリー的には通りがいいですよ。調和っても、その実、内容は「全てを破壊し、全てを繋げ」ですから見れたもんじゃないですよ』
「そりゃ古いヤツまでで、後発のはそうでもなかろ!? 奇妙な旅なんかは真ん中の方がいいじゃん! っていうか何のフォローにもなっとらんよ哲人君! ひぃい!」

 実際、我関せずと呑気していたエビゾーは、凄まじい闘気に充てられ、泡を吹きひっくり返っていた。
 更には、「もこやん」の周囲数百mに居た生き物は全て逃亡した。

 その勇猛さで知られるいるか公園の猫達ですらパニック走りで逃げだし、コースト院にいる児童らは得体の知れない恐怖に怯え泣き出しはじめた。

 「もこやん」の向かい側にある介護施設「ガンダーラ」では、重篤な患者が今まさに楽園へと旅立とうとし、上空を活動中の宅配ドローンは全て地に堕ちた。

「ええい、黙れ黙れ! 最早問答無用ッ!! 電子と陽子と中性子にまで分解してあげるわッ!! さぁ、燃え盛る乙女力《おとめぢから》の奔流を身をもって味わいなさいッ! はぁあ・・・・! 喰らえッ! 超星奔裂・戦姫宙魁千掌激!!」ズオオッ!!
「お、乙女って令ちゃん、もうそんな年じゃ・・・・はひっ!? はぎょおおおー---!! たぶりゃあ!」ズッシャア! 

 一発一発が鳳天閃並の威力を内包した突きを、(余計な一言で威力を増したものを)一瞬にしてそのツラに千発叩きこまれた|ミノムシ《ゴキブリ》は、「キャズン!」と店の入り口に向かって吹き飛ばされた。
 母は強し!南無阿弥陀仏!

 危機を察知した(?)「もこやん」の扉は、自動的に「ガラッ」と開くと、この不届き者を店外へと放出《ハナテン》した。

 路上に吹き飛ばされた|ゴキブリ《ハゲ》は、白目を剥いてビグンビグン痙攣した後、ジワ~と広がっていくお好み焼きソースの海に沈んだ。

 この時哲人らは、|ジョーンズ《ハゲ》が死んだと思ったという。

「あわわ・・・・あれは|スメラ《グランマ》ですら生涯に一度しか放てなかったといわれる幻の奥義・・・・! まさかこの目で見る日が来るなんて・・・!」ガクガク
「はう! あばば・・・・ひぃぃ・・・・」ミリュウウウホカホカ
『いつ見ても凄まじい剛拳だ・・・・って違う。感心してる場合じゃないな。おいオカン、あれは流石にやりすぎだぞ!』
「フンッ! 大丈夫よ、問題ないわっ! 死ぬ65535分の1歩手前になるように手加減はしてやったわっ! それに、あの|ゴキブリ《ハゲ》がこの位で死ぬもんですか!」
『いや、それ殆ど死亡遊戯じゃないか・・・・やれやれ、仕方ないな。』

 あまりの凄まじき光景に、さわこは怯え、優華はしめやかに失禁した。

 確かに、令の言う通り、あの宇宙冒険者はこの程度では堪えまいと思わせてしまうのに若干恐怖しつつも、様子を見に向かう哲人。
 一応生きてるだろうとはいえ、流石に放置は出来ぬ。

そう思って手当をすべく、最高級品である「ノーブルエイドリキッド」を手に表へと出たとき、

「きゃあ! 教授しっかり! 何やらかしたのかは知りませんが、死ぬならせめて今ある論文を全て脱稿してからお亡くなりください!」ユサユサ

 と、心配してるのかそうでないのか分からない感じに|ジョーンズ《ハゲ》に取りすがる女性がいるのを見つけた。

長すぎるからつづくんじゃあ!|臨機応変《行き当たりばったり》ここに極まれり!

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